フラメンコギターへのチューナー装着を考える

〜できるだけ目立たないチューナーを付けたい/サウンドホールチューナーの導入〜

2018年7月19日




KORG RIMPICH装着ギターの写真

コルグのサウンドホールチューナーRimpitchを使用しているの図




フラメンコギターに限らず、アコースティックギター/ガットギターの調弦に便利なのがクリップオンチューナーであります。ヘッドに装着して使うものが一般的ですが、できるだけチューナーを装着している事を目立たなくしたいという意向で、サウンドホールチューナーを導入しました。名づけて「チューナー・ステルス化計画」です。

なお、このページでは楽器にチューナーを「いかに固定するか」に主眼を置きつつ話をすすめていきます。具体的にはチューナーを両面テープでギターに貼り付けるなどの行為を実施します。テープがギターの塗装に与える影響などさまざまな問題が発生する可能性がありますが、これらはすべて全て自己責任となります。このページと同様の方法を実践する事でギターに何らかの損害が出ても当方は責任をとれませんのでご承知おきください。



まずクリップオンチューナーについてひとこと。これがあとン十年早くこの世に出現していたら、もっと具体的に言うと私が中学生のときにこの世に存在していたなら、私はギターで挫折はしていなかった、その後の私のギター経歴はもっと充実したものになっていた、と思うのです。私は中学生のときにギターをはじめたのですが、挫折した原因は「調弦ができない」せいでありました。当時存在していたのは調弦笛。歌口が6つある笛で、吹くとそれぞれから各弦の音が出るというシロモノ。そんなモンでまともに調弦できるはずもなく、私はうまく調弦のできていないホンキートンクなギターを弾くことに疲れ、挫折したのであります。ああ、私は現代のクリップオンチューナーを持って中学時代にタイム・リープしたいよ。

かくして中学時代に「中島みゆきみたいに弾き語りしたい」と願った夢は見事に挫折したのですが、それから月日は流れて。私はイーグルスの"Take It Easy"をやりたいと願うフォークロック・カントリーロック姉さん(←自称)に変貌をとげておりました。イーグルスをやりたい、というその思いを抑えきれず実家で眠っているモーリスのドレッドノートを再び手に取り、ヤマハ「大人の音楽教室」の門を叩いたのでありました。

この「ギタリスト再デビュー」にあたってはすでに「クリップオンチューナー」なる物の存在を認識しており、それさえあれば不器用なエゾモモンガでも調弦できると知っていたので、さっそくヨドバシカメラに買いに行きました。そして最初に購入したクリップオンチューナーはセイコーのSTMX1。


セイコー STMX1 クリップオンチューナー&メトロノーム
http://www.sii.co.jp/music/products/tuner/stmx1.html


チューナーとメトロノームが合体したキワモノ的な製品であります。形状がいささかダサい上に巨体であり、決して「洗練された道具」ではなかったのですが、私のような「チューニング乳児」でも確実に調弦ができるという、非常に画期的な道具でありました。値段がすごく高い。定価が税抜6千円ですから、ヨドバシでも5千円以上払ったと記憶しています。私のイーグルス・コピーバンド・デビューを実現したのはこのチューナーのおかげ。いくら感謝しても足りないぐらいだ。



セイコーSTMX1


セイコーさんには申し訳ないが、このデザインはひどすぎますよマジで



その後いくつかのクリップオンチューナー遍歴を経て入手したのがKORGのPitchHawk-G。最初に使ったセイコーSTMX1が巨大で、ダサく、ヘッドに付けっぱなしにするのが「どことなく気恥ずかしい」チューナーだったのに対し、PitchHawk-Gはコンパクトでデザインもかっこよく、使いやすいので長いこと使っておりました。あまりにも気に入ったので通算3個買って使い倒したほど。強いて欠点を挙げるとすれば、モノクロ液晶のため視認性がイチマイチな点でしょうか。私は視力が悪いこともあり、できればカラー液晶で「チューニングが合うと緑色に光る」ようなタイプが好きなのです。なお、PitchHawk-Gは現行製品からはカタログ落ちしており、後継のPitchHawk-G2(カラー液晶搭載)が出ています。ナイス改良です。



使いやすいチューナーKORG PitchHawk-G


これぞクリップオンチューナーの王道、機能的にも文句なし



さて、ここからがいよいよ本題です。「調弦」という目的でKORG PitchHawk-Gを使う分には何の不便もありません。使いやすく、きっちりと仕事をこなしてくれる、縁の下の力持ちのようなすばらしい機材。しつこいようですが中学時代のワタシにこれをプレゼントしたい位。これがなければマトモにギターも鳴らせない私としては、PitchHawk-G様様なわけです。しかし・・・


「ヘッドにチューナーを付けた姿が、なんかイヤ」


なのであります。別に誰も見ていないし気にもしない。多くのミュージシャンが当たり前のこととしてヘッドにチューナーをつけた状態で演奏をしている。しかし私は「ヘッドに付いたクリップオンチューナー」がなんかイヤなんだッ。ピョコンと飛び出たチューナーがなんかイヤなんだッ。もしくは、虫がくっついているみたいにヘッド部に存在するそのたたずまいがイヤなんだッ。そんなチューナーをつけた状態でギターを演奏するのが激しくイヤなんだッ!!

・・・これは理屈ではないのです。好みの問題に近い。好き嫌いの問題。美学の問題というほどではない。なぜなら私、つかわないカポをヘッドにくっつけておくのは全然イヤじゃないのであります。愛用のカポはカイザーのクイックチェンジカポですが、演奏中はこれをいつもヘッドにつけています。カポはよくてチューナーはダメっていうのは理屈に合わないというか、うまく説明できないのであります。しかし、イヤなものはイヤなのです。クリップオンチューナーだけはダメだ。チューニングが終わったらすみやかにヘッドから外したい!!

話は飛びますが皆さんはエレアコやエレガットはお持ちでしょうか。これらはモノによってはチューナー機能が内蔵されていたりしますね。非常に便利です。私、チューナー内蔵ギターが大好きであります。私の所有する12弦ギターにはB-BANDのプリアンプが搭載されており、これにチューナー機能が付属していてものすごく快適。その便利さに影響を受けて、古いクラシックギターにチューナー機能つきプリアンプを搭載する「外科手術」を行ったのは前回の記事です。だから、もしも「スペイン製でチューナー内蔵のエレガット・フラメンコで生音が激成りで見た目が好み」だったら、それは是非とも欲しいと思う次第であります。



チューナー内蔵のギター


胴にチューナーがビルトインされたギターは本当に便利




そんな私ですが「調弦用のチューナーを目立たないようにギターに装備したい」と思う人は他にもいるらしく、我らのKORG社が素晴らしい製品をリリースしてくれました。人呼んで"Rimpitch"(リムピッチ)という、サウンドホール装着型チューナーであります。


コルグ リムピッチ アコースティックギターチューナー
http://www.korg.com/jp/products/tuners/rimpitch/




KORG Rimpitch(写真は公式サイトより引用)



チューナーにはステルス性を優先したい私にとっては夢のような形状であります。サウンドホールの内側に本体が収納され、外からはクリップ部が少し見える程度。姉妹製品であるRimpitch-C(クロマチックチューナー)にいたっては本体色がギターのトップに近いベージュという凝りっぷり。コルグさん、貴方はよく分かっていらっしゃる。サスガ、サスガと喝采をおくりつつ、さっそくリムピッチを注文したのでありました。ところが。



チューナーの曲線が、フラメンコギターのサウンドホールのアールと一致しない



という、どうにも回避不能な問題に突き当たりました。アコースティックギターの直径10cmのサウンドホールに合わせた設計のため、我らフラメンコギタリスト(クラシックギタリスト含む)のギターのサウンドホール(直径8.5cm前後)には全然フィットしないのであります。ぬおおおおおお。

かといってこの素晴らしいチューナーをあきらめきれない。そこで苦肉の策として、強引に両面テープで固定するというきわめてダサい方法に打って出ました。近くで見ると泣きたくなるほど貧乏くさく、かつボロい状態ではありますが、なーに、遠くから見たら分からないのよねん。私が気にするほど、オーディエンスからは見えない(気にならない)はず。


ギターに両面テープで固定してある


よく見ると両面テープで固定しているのが見えるKORG Rimpitch



そんなありさまですが実用性の高さはダントツ。何しろヘッドにピョコンとチューナーを付ける姿から解放されたのです。ギターをおもむろに見下ろしつつ、スムーズな調弦が可能になりました。弦の振動をよく拾い、とても快適にチューニングできます。調弦が合うとランプが緑色に光るのもいい。両面テープで固定しているのでロドリーゴ・イ・ガブリエラ奏法のような「激しい演奏」をやっても大丈夫。平手打ちでチューナーを吹っ飛ばすという事故は一度もありません。このスタイルで今は無き新宿EL FLAMENCOのステージにも立ち、無事に演奏を終えることができました。うむ、大満足。

不満がないわけではない。やはりナンと言っても「サウンドホールの外周にフィットしていない」のは強烈にダサい。両面テープも何かみすぼらしい。超絶に貧乏くさい。それともうひとつのケチをつけるとすれば、使用するボタン電池(リチウム電池)がCR1620という点です。私はそれまで使っていたチューナーがPitchHawk-GということでCR2032を大量に在庫しており、それと違う電池を使わなければならない、というだけで憎いのであります。

※話はそれますが私はCR2032リチウム電池が大好きです。大、大、大好き。愛してる。リチウム電池の中で一番好き。基本的にギターチューナーの「標準電池」といっても過言ではない使われっぷり。たいていのクリップオンチューナーがCR2032を採用しています。それ以外にも愛用しているペツルのe+Liteという非常用ミニライトでも使われているなど、私の日常生活に深く、ふかーくとけこんでいる電池なのであります。



Petzl e+Lite(写真は公式サイトより引用)

ペツルのe+Lite



これがペツルのイーライト。リール式のひもでイザというときには頭に固定して「ヘッドランプ」にもなるというスグレモノ。アウトドア初心者がバカにするのがヘッドランプ(俗称:ヘッデン)ですが、実際にキャンプに行くとヘッドランプが無ければ夜の食事もトイレもままならないのです。なんかどんどん話が脱線するので元に戻しましょ。このランプがCR2032リチウム電池を使うのですよ。そんなわけで音楽活動のみならず非常事態にもそなえて在庫する対象となっている電池がCR2032なのです。繰り返します。私はCR2032リチウム電池が大好き。

・・・ああ、KORGリムピッチがCR2032採用だったらなァ。

そんなことを思う奴はたぶん世の中で私ぐらいじゃないかとおもいつつも、Rimpitchが使う電池の種類に人知れず不満をつのらせていたある日、ギター関連グッズでは時々ユニークなもの(トンチンカンなものを含む)をリリースする我らのPlanet Waves社から、超コンパクトなサウンドホールチューナーが発売されていることを知りました。


D'Addario by Planet Waves NS Micro Soundhole Tuner(英語)
http://www.planetwaves.com/pwProductDetail.Page?ActiveID=4115&productid=1073&productname=NS_Micro_Soundhole_Tuner




NS Micro Soundhole Tuner(写真は公式サイトより引用)


やだーなにこのちっちゃいチューナー!!サウンドホールの直径は全く問題にならないデザイン。このサイズならフラメンコギターにもサラリと「美しく」装着可能なはずです。そしてKORGのリムピッチ以上に、ステルス性が高いに違いない!!しかも、しかもですよ、使用する電池はCR2032ときたもんだ!!これぞ本命。これこそ理想のチューナーではありませんか。イカしてるわね!Planet Waves。

ここで、またしても話が脱線して恐縮ですが、いい機会なので私の愛用するPlanet Waves製グッズ(トンチンカン系含む)を紹介しましょうか。まずはPlanet Lock Guitar Strap。ダイヤルをまわすだけでストラップピンにロックできるすぐれたストラップエンド(バックル)。私はお気に入りのクリスチャンストラップにこのバックルを移植しました。ストラップをバッチリ固定でき、脱着も容易。すぐれもの。サイコー。これはトンチンカンじゃなくてヨイものです、マジで。


プラネットロックギターストラップの素晴らしいバックル




つづいてアコースティック・クイックリリース・システム。ストラップのヘッド側をワンタッチ!一瞬ではずせるのよ!!だから何??っていうグッズ。ちょっとだけトンチンカン。



ワンタッチではずせるストラップ留め具




もうひとつはスチール弦を切るニッパーを装備したストリングワインダー。ニッパー部分が超絶に使いにくい!!かなりトンチンカン。もしも友人知人がこれを買おうとしていたなら、私は全力で阻止します。教訓。ニッパーは単体の(ちゃんとしたのを)買いましょう。ナハハハハハ。



このニッパーが事実上使い物にならないのよ




こんなふうにピンポイントであやしいグッズをギター市場に送り込んでくるPlanet Wavesが私は大好きです。しかし今回の話題はあくまでもギターチューナーであります。話をサウンドホールチューナーに戻します。何はともあれNS Micro Soundhole Tunerが良さそうではありませんか。はやる気持ちをおさえつつ、さっそくこの超小型のチューナーを注文してみました。

完璧です。ステルス性が極めて高く、フラメンコギターにも美しく装着でき、文句のつけようがない。これで私のチューナー探しの旅は終わった。これぞ最高傑作。Planet Waves最高。CR2032リチウム電池は永遠に不滅です。

・・・と言いたいところですが、そう諸手を挙げてほめることはできないのであります。それはチューナーの感度がいまいちという致命的な欠点があったのでした。KORGのリムピッチと比べるとオオアリクイとエゾモモンガほど違う。リムピッチの方が反応がよく、スムーズに調弦できます。NS Micro Soundhole Tunerはちょっとイライラするレベル。ステージ上で私がギターのサウンドホールを見下ろしつつ眉間にシワをよせていたら、それはこのチューナーでの調弦でイラついているとみて間違いはありません。

しかも、何度か使っているうちにギターのボディに留めるクリップ部が折れてしまいました。ダメじゃん!!なかなか完璧な製品というのはないものですね。

そうこうしているうちに、なんと!KORGのリムピッチが販売終了。瞬間芸のように市場から消え去りました。これは本当にショックでした。支持者が少なかったのか?

と言う感じで、これまでのチューナー遍歴を軽く書きつつ本命の「サウンドホール・チューナー」について語ってみました。現在はKORGのリムピッチを使っていますが、やはりサウンドホールにフィットしないのは美しくない。ぜひとも「クラシックギター用/フラメンコギター用」をリリースしてほしいものだ、と思ったりしたのですが、リムピッチ自体が販売終了となってしまった今、それは無理な相談でありましょう。

今後も、なるべく目立つことなくギターに装着できるチューナーがあれば、積極的に使ってみようと思っています。






※使用カメラ:FUJIFILM FinePix F80EXR、HUAWEI P10 lite

(2018年7月19日 記)





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