白樺派

〜秋のクリスタルラインを経て白い森へ〜

2013年11月のある日





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高校時代に「友情」を読んでズッコけ、さかんに野菜の画を描いては「仲良きことは美しき哉」なんてテキストを添えつつズバン!と落款を捺してる晩年のイメージが強烈すぎて武者小路実篤は敬遠しまくっていた私でありますが、彼の「静かなねむり」という詩は心の底から素晴らしいと思います。かつて全身の痛みで不眠に苦しんだ私は、この詩にあふれる「睡眠愛」を賛美せずにはいられない。



「静かなねむり」 武者小路実篤

つかれて
ねむくなって
静かにねる
心地よさ

自分は毎晩
静かにねられることを
感謝し
そしてねられぬ人々のことを思う。

どうかして

静かにねられるように
したいものだと思う。



はじめてこの詩を読んだとき、私は個人的に武者小路実篤と和解した気分になったよ。さいきんはいつもこの詩の心境で眠りにつく。毎晩、主に感謝しながら・・・ついでだからもうひとつ、彼の詩ですごくすきなのが「いゝ墨」(いいすみ)。これも私の共感度1,000パーセント。実篤先輩!!と呼びたくなる。



「いゝ墨」 武者小路実篤

いゝ墨が来た、
見ていると
すりたくなるなり
すると画がかきたくなり
かくと墨色が気に入り
嬉しくなるなり
ねる時枕元に
その墨を持って来て
ねるなり。
いゝ墨を得て
われは子供のように
よろこぶなり。



まんま私ではないか。いいカメラが来た、見ていると、いじりたくなるなり すると写真が撮りたくなり・・・枕元にそのカメラを持ってきて、ねるなり・・・みたいな。

この二篇以外にも素晴らしい詩がいくつもありますので、興味ある方はぜひ読んでいたただきたいと思います。今となっては遠い日、武者小路実篤詩集を贈ってくれた友人の幸福を私は祈ります。

秋。旅をするにもいい季節です。かつて私が自分の旅行用自転車を橙色でオーダーしたのは、ニッポンの秋の山風景、もっというと山里で目にとびこんでくる柿の実の美しさを「旅心の象徴」になぞらえたからでした。秋の旅は本当によい。この季節にひとり旅するときの、あのなんともいえない胸をしめつけるような淋しさが私は好きなのです。

山梨県のクリスタルラインを経由して八ヶ岳へ。今日の目的地は私の大好きな場所、八千穂高原の白樺群生地。ここを教えてくださったのは佐久の旅人宿「三輪舎」のご主人。横浜のブラフ18番館とならんで、私がこの世で最も好きな場所がひとつ増えました。これからも、この白樺の風景が見たくて私は何度もここに来ることでしょう。

そんな私は間違いなく白樺派なのです。



※使用カメラ:FUJIFILM FinePix XP150

(2013年11月4日 記)





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