Verde

べるで(私の緑)


2006年7月22日




Verde que te quiero verde.

青春の思い出に満ちた街に あふれる

私の緑




ポラロイドの魅力は、なんといってもよい意味で期待を裏切ってくれる発色の魔法。愛機ポラロイドSX-70に600フィルムを入れて撮っていると、ときどき、思いがけないほどに美しい緑に出会うことがあります。




わが みどり 1




小雨降る、7月の午後。場所はブラフ18番館。籐椅子に腰掛けて、さっき撮ったポラロイド写真を手にとって、ぼんやり眺めて過ごすひととき。


緑、緑、緑。




わが みどり 2




こんなときは決まって口をついて出てくる詩のフレーズがあります。


Verde que te quiero verde.
Verde viento. Verdes ramas.
...




わが みどり 3




緑、緑、私の愛する緑。

緑の風。緑の枝。

小船は海に 馬は山に。

腰の辺りに影を落とし

彼女は手すりにもたれて夢を見る。




わが みどり 4




そのむかし「外国語学部」なんていう道楽色たっぷりな場所に籍をおいて、スペイン語漬けな日々をゆるゆると過ごしていた私。あのころは、ガルシア・ロルカ(※)の詩なんて大嫌いだった。


※20世紀初頭のスペインの詩人。



わが みどり 5




「ロルカの詩、最高だよね」

「うん、彼は天才だね」


なんて語り合ってるクラスメートたちを心の奥底でバカにしていました。ロルカなんて、どこがいいんだ、フラメンコとジプシーのスペインじゃないか。こんなもの、こんなもの・・・




わが みどり 6




それが、どうしたことだろう。今も口をついて出てくる、このリズミカルで心地よいフレーズ。19歳だった私の脳の片隅にに書き込まれて、片時も忘れた事など無かったのだ。



Verde que te quiero verde.

べるで けてきえろ べるで



ガルシア・ロルカの作品、ROMANCE SONÁMBULO(夢遊病者の歌)の冒頭です。
verde とはスペイン語で緑の意味。ああ、ひとりつぶやいてみれば、胸をかきみだすほどに美しい緑をかんずる。



わが みどり 7



Verde viento. Verdes ramas.

べるでびえんと べるですらます


・・・軽いめまいをおぼえる。緑の風。緑の枝。その美しいイメージをつきつけられて、全身の力が抜けてしまう心地がする。私は今この場所にうずくまって、大声をあげて泣きたくなる。




わが みどり 8




Verde que te quiero verde.
Verde viento. Verdes ramas.



さて、緑と言えば、19世紀の詩人ベッケルの散文「緑の瞳」もまた、格別に美しい。エメラルドの輝きを見るたびに、緑の瞳を想像する。ああ、なにもかもが緑。心に散らかった緑。

緑、緑、緑・・・




わが みどり 9




そしていまは素直な気持ちで、ロルカの詩を味わっている。この心地よいリズムに身をゆだねている。ロルカの詩は、とてもいい。



何故だろう、若い頃に必死に否定していたものが、いまは全ていとおしい。

必死にもがいていたあの頃の自分は、いったい何だったのだろう。




わが みどり 10





そして、いまはとっても素直な気持ちで、イエス・キリストを信じていたりするのです。

(学生時代の友人たちは、おどろくだろうネ)




世界中の若者たちに、主の恵みが豊かにありますように。



2006年7月 初夏のブラフ18番館にて

Nódoka










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