潮風のホテル
(ある詩人の為に)

2003年11月



詩人は想い出す

銀色の街の憐れみを。

屋根裏に

言葉をちりばめた日々を。













潮風に

碧の髪を

なびかせて

その詩人は ゆく













若い詩人は今日も その窓を見上げていました

彼は今夜、どんな言葉を綴るのでしょう













あなたの細い指先が

そっと触れた

私の心の

片隅













真っ白な

中庭


詩人は

ひるね中。













きらりと光ったのは


詩人が

こにに こぼした

涙のかけら


ごめんね














詩人は

振り返る



ひらめいたはずの

言葉は


あれ

車の下に入っちゃった













今日の憂いは

扉の中に

今日の悦びは

潮風にのせて













詩人は待っている

信号が 変わるのを


詩人は立っている

さっき コンマをはずした場所に


詩人よ

あなたの言葉で

新しい朝を

届けてください










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