ウェブサイトのトップページで公言しておりますように、わたしはフラメンコ歌手であり、ヴェノーヴァ奏者であります。ことにヤマハのVenovaに関しましては、その楽器としての素晴らしさ、楽しさ、奥深さにたいへん魅了されており、普及活動にいそしむ日々なのであります。ひとりでも多くのヴェノーヴァ奏者が増えるようにと願いつつ、この新しい楽器を自分のメイン楽器に据えて活動している次第です。
話はとびますが、わたしが幼少時より憧れていた楽器は3つあります。それはギター、ヴァイオリン、そしてフルートの3種類であります。ギターは中島みゆきや吉田拓郎のようなフォークの弾き語りスタイルを自分もやってみたいと強く思ったのです。ヴァイオリンとフルートについては、その演奏するときのエレガントなスタイルに「カッコ的な意味で」あこがれたのでありました。
中学生になった時にギター教室にかよいはじめ、あっけなく挫折し水中深く潜航したのち、数十年後に大人のヤマハ音楽教室のアコースティックギターレッスンに行って「ギターの弾き語り」に関しては子供の頃のあこがれを実現することができました。これは本当に素晴らしいことでした。中学時代のグループレッスンではワケがわからずオロオロするばかりでしたが、ヤマハの先生が丁寧に指導してくれたことで「挫折からよみがえった」のであります。ただの野蛮人だったわたしが、ギターを手にすることでミュージシャンとして活動を開始したのであります。
わたしは20代の半ばに自転車で派手な落車事故にあい、頸椎から腰、股関節にかけて大けがを負いました。その後遺症で何年も苦しんでいるのですが、特に頸椎のダメージは半端ではなく、手のしびれ、のどの閉塞感、舌のふるえなどが残ったため母親から「その身体ではヴァイオリンもフルートも無理であろう」と言われたのでありました。
懸命のリハビリで日常生活が送れるところまで復旧した現在はヴェノーヴァ奏者として縦横無尽にうごきまわる日々なのであります。今更ヴァイオリンには憧れはまったくない。わたしは管楽器が好きなのだ。管楽器が性に合っているのだ。であるなら、やはり、フルートに挑戦したいではないか。
というようなことを「思いついちゃった」のです。いま、こうやってヴェノーヴァを吹きながら音楽を心の底から楽しむ生活を送っているわけです。かつておおいに憧れ、そしてあきらめた楽器に「チャレンジしてみる」いい機会、というか最後のチャンスではないのか。
わたしの座右の銘は
・「困ったときはまず飯を食え」
・「これからの人生で今日が一番、若い」
という2つであります。ここで大事なのは2つ目のほうです。これからの人生で今日が一番、若い。何事も挑戦するなら「今こそがその時」なのであります。この若さを無駄にしてはいけない。ということでフルートに挑戦したい気持ちがどんどん高まってゆきました。しかし、いきなりフルートというのは困難であります。そこで、わたしは子供向けのプラスチック楽器であるnuvo社のTooT(トゥート)に注目しました。
nuvo TooT
https://kcmusic.jp/nuvo/toot.html
![nuvo TooT](003/003flute002.jpg)
プラスチックボディにシリコンパーツのおもちゃフルート、TooTです(写真は上記公式サイトより引用)
![nuvo TooT](003/003flute003.jpg)
リッププレートがリコーダータイプとフルートタイプの交換式で初心者でも簡単に音が出せるという(写真は上記公式サイトより引用)
まさに子供向け知育玩具といった趣であろうか。これで音が出せなかったら見込みはない。フルートなんて無理であろう。逆に、これで音が出せたならフルートにステップアップしてもよいのではないか。さっそく購入してみた。Amazonで4千円ぐらい。チャチに見えるが値段がけっこう高いので一瞬ひるみつつも、憧れのフルートに向けての第一歩ということで思い切ってポチった。余談ですがなんか黒×ピンクとかって海中の生き物みたいでなんか気味が悪いので、色は白×青にした。
まずはリコーダーのように息を吹き込むだけで音が出る方のリッププレートを装着した状態で、実験であります。運指がヴェノーヴァとは違うので付属の運指表をみながら少しずつ覚える。あくまでもオモチャ的な楽器なのでチューニングなどはできないし、マトモに音が出るのはドからはじまる1オクターブぐらいで(上にはもうちょっと伸びる)決して本気の演奏に使ってはいけない的な感じであります。いちおう半音も(その気になれば)出せるようだが、仮にこれでいろいろ運指を覚えても応用がきかない。あまり深入りせず、あくまでもフルートのアンブシュア(演奏時の口のカタチ)を習得するための道具として使おうと思う。
簡単な方のリッププレートを使えば幼稚園児でも横笛が吹けるというナイス発明品であります。さっそくハインリッヒ・ヴェルナー(ウェルナー)の「野ばら」を吹いてみた。わたしの好きな曲であります。こういう単純な音使いで美しいメロディーが書けるというのは本当にすごいと思う。TooTは実にいい感じだ。横笛を吹いている、というのがとても嬉しく思われる。これはいい。数日間はその状態で遊んだ。まさに幼稚園児状態。
しかし、いつまでもそうしてはいられない。笛の吹き口がついた簡単な方のリッププレートを使っている限り、幼稚園児のままであります。フルートと同じタイプのリッププレートを使えるようにならなければ意味がない。サクッと移行して、フルートで音を出す練習をし、とっととTooTなど卒業したいではないか。わたしはリッププレートの交換を行いました。
![nuvo TooT](003/003flute004.jpg)
これで音が出せればフルートにステップアップできるはずだ!
さて。ここから本当の試練が始まりました。いちおうTooT付属の説明書にもフルートのアンブシュア(演奏時の口の位置や形)について解説が出ているのだがいまいちわからん。理屈としてはサイダー瓶の口に息を吹きかけてボーボー言わせるあの「鳴らし方」なのだが、唇に当てる位置や息を吹く感じがなかなかつかめず、音が出せる位置を必死に探す感じであります。
フルート演奏家がいきなり構えて、百発百中で美麗な音を出す
というのは、すさまじい神業に思われる。ヴェノーヴァは口に咥えるという動作が入るので「ちょうどいい場所を意識してくわえればよい」わけですが、フルートは下唇に当てるだけで、噛んだり咥えたりはしない。ということで「正しい位置と角度で口にあてる」のがハンパ無く難しい。「猛特訓」がはじまったのであります。これは遠回りになるな、と思ったので初心者向けの教本もあわてて購入。
![nuvo TooT](003/003flute005.jpg)
初心者向けの教則本も入手したぞ!もう後にはひけないエゾモモンガ!!
ということで目下、フルートのアンブシュアの練習に励んでおります。本当ならきちんと先生のところに習いに行くのが筋なのですが、経済的にこれ以上音楽関係のレッスンにお金をかけるのはチト厳しいのでな。わたしは独学でフルート奏者になれるのでしょうか(つづく)。
#02
2020年5月23日(土)
そろそろ、きちんとしたフルートに転向したい
nuvoのTooTに思いのほかハマり、なんとかフルート型のリッププレートでも音が出せるようになってきたエゾモモンガ。ここまできたなら、いつまでもこんなおもちゃで遊んでいないで、きちんとしたフルートに転向したほうがよいように思われます。
しかしフルートは高価な楽器であります。1万円程度で買えるプラスチック楽器、ソプラノヴェノーヴァとは訳が違う。新品なんて、ヤマハ海外工場製の廉価モデルでも10万円ぐらいする。楽器屋さんに並んでるフルートを見ると普通に30万とか60万とかするのである。そう、フルートに限らず管楽器はおしなべてブルジョワジーの持ち物なのだ。とてもじゃないけど貧乏底辺ミュージシャンのエゾモモンガには手が届かない世界であります。
そこでわたしは、TooTと同じ、nuvo社のスチューデントフルートという製品に注目しました。TooTと同じようにプラスチックボディを採用した軽量な楽器であります。
Student Flute:スチューデントフルート
https://kcmusic.jp/nuvo/student_flute_2.html
![nuvo Student Flute](003/003flute006.jpg)
プラスチック製のフルートです
Amazonで2万円ぐらいで買えます。アルトヴェノーヴァと変わらない。これでいいではないか!!何しろわたしの本業はヴェノーヴァなのでありますから、きまぐれで始めたフルートに必要以上にお金をかけず、自分が楽しめればそれでいいじゃん。メンテナンスの楽なプラスチックなら、なおさら大歓迎だよ。わたしはスチューデントフルートをAmazonのカートに入れました。あとはポチっとするだけであります。
しかし、ポチれない。何か中途半端なものを買うような気がしてしまうのだ。
ヴェノーヴァは、もともとヴェノーヴァという楽器だからあれでいい。しかしこれ(スチューデントフルート)は、いわばフェイク・フルートであります。フルートもどき。フルートのようなもの。本物のフルートではない。そこが、何かひっかかる。
私の買い物のポリシーは「迷ったら最上位モデルか、最下位モデルを買え」ということになっています。さすがに楽器の最上位モデルは無理ですから、最下位モデルを買うのが筋でありましょう。スチューデントフルートは「最下位モデルのフルート」ですらない。どちらかといえばTooTの延長線上にある。
やっぱり、ちゃんとしたフルートが欲しい。
最下位モデルというのは、Amazonなどで2万円程度で売られているMade in Chinaの安物のことではない。まともな楽器の世界でいえば、ヤマハの廉価モデルのことであります。もちろん他のメーカーであってもよいけれど、楽器については、とにかくヤマハが一番なんである。
楽器のヤマハは、これは褒め言葉として受け止めていただきたいのだが、「どうでもいいものを作らせたら世界一」という素晴らしいメーカーなのだ。たとえばフラメンコギター。安いフラメンコギターを作らせたらヤマハの右に出るものはいない。スペイン製のギターなどは日本に来ると湿気でヤラれて音が変わってしまうことがあるが、ヤマハのフラメンコギターは最初から日本の気候にあってるから最初から「それなりに鳴る」のである。劇的にいい音はしないが、ヘボくもない。そういう意味で安心して使えるのがヤマハの安いフラメンコギターだ。予算10万円ではスペインのギターは買えない。フラメンコギターの買い物はとりあえず20万円、できれば60万円用意しろと言われる世界でありますから、私のようなビンボ人はヤマハのギターで充分なのであります。
とあるサックス奏者が言っていたことですが、サックスを買うにあたっては
・安物を買うぐらいならレンタルで済ませなさい
・予算が限られている人はヤマハの中古を買いなさい
・予算が潤沢にある人は、上手な人にお店につきそってもらってじっくり音色を比較して買いなさい
とのことであった。これは真理だと思うのです。2番目が大事。そう、「予算が限られている人はヤマハの中古を買いなさい」というのは格言のようなものだと思う。
ヤマハの楽器は日本全国どこにいても安心して修理に出せる、というのが素晴らしいのだ。中古品なら新品の半値ぐらいで買える。わたしはヤマハの中古フルートを買うべきだろう。
ということで、後悔しないようにとヤマハの中古を狙うことにしました。きちんとメンテナンスされてお店の保証がついた中古品が、ヤマハの古い廉価モデルなら4〜5万でなんとかなる。5万ならなんとかなる。
これまで中古ギターや中古ウクレレに関してはネットオークションなどもつかってきましたが、フルートに関しては楽器屋さんで買うことにしました。東京に実店舗のある所で、きちんと調整済みで、お店の保証付きの、程度のそこそこな中古品を買おう。気に入ったものが見つかるまで、気長に構えてじっくり探そう。
そうと決まれば戦は長期を覚悟しなければなりません。とりあえず「TooT以上フルート未満」ということでヤマハのファイフ(横笛)を買いました。
ヤマハ ファイフ
https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/recorders/abs_resin_fife/index.html
![Yamaha Fife](003/003flute007.jpg)
ヤマハのプラスチック製の横笛、ファイフ
![運指表](003/003flute008.jpg)
ファイフの運指表
現状はとりあえずファイフで遊びつつ、つなぎ的にnuvoのスチューデントフルートを買ってしまうのもアリかもしれません。いずれ本物のフルートを買っても、サブの楽器として活用できそうに思います。
#03
2020年7月2日(木)
フルート購入!!
楽器購入の格言、すなわち「予算が限られている人はヤマハの中古を買え」というありがたい先人たちのアドバイスにしたがい、ネットで楽器屋さんの中古フルート販売サイトをチェックする日々が続きました。中古なら、むろんグレードと商品の状態(程度)によりピンキリということにはなりますが、ちゃんとしたものが新品の半額ぐらいで買えるのです。古い廉価モデルなら税込4万円ぐらい。その気になればわたしでも歯が立ちそうな金額です。
そんなさなか、東京都内のある楽器屋さんで、ヤマハのYFL-211PS IV(IVはローマ数字の4)という中古フルートに巡り会いました。
真鍮製のヘッドキャップ(先端部分)に、千歳緑色(ちとせみどりいろ)の京都オパールが装飾されているというゴージャスな限定モデルであります。10月生まれで10月2日が霊名の祝日、誕生石はオパールな上にオパールが大好きでしょうがないというわたしにとってはまさに「コレダ!これしかない」という逸品であります。どうしてもこのフルートが欲しくなってしまいました。
![フルートの先端にオパールがついているフルート](003/003flute009.jpg)
先端部分にオパールが埋め込まれたフルート(写真は京都オパールの供給元、京セラの下記サイトより引用)
京都オパール採用事例 ヤマハのフルート
https://www.kyocera.co.jp/social/products/20131022-1/
クラウンに京都オパール埋め込み、リップ(唄口)銀製、その他洋白、洋銀製、銀メッキ仕上、Eメカニズム付の限定モデル。
しかし高い。中古とはいえ値段がすさまじい。どうするよ。
当初考えていた「予算?そうねMAXで4万円ぐらいかな」というのでは全然歯が立たないのであります。オパールが付いている分だけ価格が跳ね上がっているのであります。高いよ!!だがわたしの誕生石であるオパールがついているからこそ欲しい。まさに「のどかアンジェリカ・スペシャル」の名にふさわしいフルートではないか。
都内の楽器屋さんが扱っている中古品ということで「分解クリーニング、バランス調整、オイルUP、1年保証付」を謳っています。曰く、
・使用頻度が低く小さなスリキズが少しある程度の綺麗な良いコンディションです。
・タンポは新品同様できっちり調整済みですので長くお使いいただけます。
・吹きやすく鳴らしやすく、Eメカニズム付で高音Eも出しやすいので吹奏楽や音楽教室にお奨めできます。唄口銀製の限定モデルで通常モデルよりも音のまとまりとツヤがあります。頭部管クラウンに施された京都オパールが美しいフルートです。ケースカバーもこのモデル限定で高級感のある品の良い作りです。
・手入れ用品は新品のクロス、クリーニングガーゼをお付けしています。
ということで素人のわたしが手を出しても大丈夫そうな感じの中古品です。オークションでゴミをつかまされる失敗(の可能性)をおもえば、多少値が張ろうとも良い買い物であろう。
買おうと思っていた自転車を、ひとまず延期して、ことしはフルートにしよう。
わたしは覚悟を決めました。エゾモモンガらしく飛膜をひろげて清水の舞台ならぬサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の屋根から華麗にダイブしたのであります。
翌日、店から発送完了の電話&メール連絡があり、さらに1日たってフルートが手元にやってきました。ありがとう佐川急便さん。
おっかなびっくり開けてみる。何しろこっちはフルートなんて触ったこともないエゾモモンガなのであります。「フルート 初歩の初歩 入門」なんていう手引書をあわてて買ったほどの、初心者以前の存在でありますから、緊張することこの上ない。
ケースをあけると3分割で収納された銀色のフルートが現れました。おお!カッチョエエ。なんという高級感。なんというエレガンス。
![ヤマハのフルート](003/003flute010.jpg)
美しいフルート(構え方すらワカラナイ!)
![オパールの輝き](003/003flute011.jpg)
オパールが輝いているYO!
「やっぱフルートは美人以外は吹いたらダメだよなぁ」
などと軽く自爆しつつ、まじまじと眺める。たとえて言うなら宝石やアクセサリーを買ったときの感動に似ている。ものすごく綺麗なのだ。見ているだけでも惚れ惚れするような、銀色に輝く楽器であります。わたしがこんな高級そうなものを手にしてしまっていいのであろうか。
フルート奏者の方にとっては当たり前なのでしょうけど、楽器そのものはハードケースに入っており、そのハードケースを入れるポーチというかソフトケースがあって、いわば二重で保管・携行するのであります。ギターと違って本当に「貴金属」って感じだ。ちょっと感動してしまった。
なおショップの付属品としてメンテナンス用のクロスなどがついてきました。もう、あとは吹いてみよといわんばかり。
しみじみとフルートを見ながら「思い切って買って良かった」と感動したのであります。オパールの輝きは見事というほかはなく、神秘的な銀河に吸い込まれそうな感じです。10月生まれで本当に良かったと思うのであります。誕生石がこんなに素晴らしい、自分好みの石だなんて主に感謝せずにいられないわ。劇的に予算オーバーしてしまった荒ぶる買い物でしたが、後悔は微塵もありません。
ということでエゾモモンガさんはまごうことなきフルート所有者(←奏者とは言ってない)になったのです。お見事!!次回はいよいよ音を出してみるよ。
#04
2020年7月15日(水)
フルートの構え、これでいいのかと悩む
ついにフルートを購入したのであります。
すごいよ。モノホンのフルートだよ。ケースの中でぴかぴかに輝いております。わたしの持っている楽器としては、お値段的に超絶お高い万円でありますから、もうおっかなびっくり触るかんじになっております。
![ケースの中のフルート](003/003flute012.jpg)
私の持ち物の中でもっとも高級な品って感じ
いきなり話はそれますがヤマハのYFL-211PS IVということで頭部管クラウンに施されたオパールがとても美しい。このフルートをネットで検索しまくったせいで、最近はブラウザに表示されるネット広告が京セラのオパールばかりになってしまった。私もペンダントを持ってるけど京セラのブラックオパールはマジで絶品ですよ。オパールの天然物は値段の割にショボいものが多いので、京セラのクレサンベールは最高級品質です。
話をフルートに戻しましょう。
まずは教則本にしたがい頭部管のみで音を出してみる。そもそもフルートの組み立て方がわからない。教則本を買っておいて正解だった・・・
口を当てて息を吹き込む部分の筒が頭部管であります。リッププレートが銀製ということですさまじい高級感です。さっそく口にあてて吹いてみる。こちらはヤマハのファイフでひそかに鍛錬をつんでいたのである。澄んだ高いラの音が出た。
この時点ですさまじく感動。
TooTとファイフで地味に「横笛修行」していたのが功を奏して、幸先のよいスタートであります。
つづいて、さっそくフルートを組み立ててみる。頭部管(口を当てる部分)、主管(メインボディ)、足部管(末端の部分)をがっしん!♪アポロンヘッダー!アポロントラングー!アポロンレッガー!ユー、エフ、オー、合身!合身!〜(UFO戦士ダイアポロンって知ってる?)これは燃える。
フルートという楽器が思いのほか長く、そして重たくて少しだけビビる。教則本をみながら構えてみる。キーがいっぱいあってどこに指を置くのか、パソコンキーボードで言うところのホームポジションが、教則本なしではわからない。当たり前ですがそれぞれの指が押さえるキーは決まっています。これは試練が待っていそうだな、と思わせる複雑さでありまして、保持するのがタイヘンです。変なクセがついてロクな演奏ができない的なパターンに陥る事うけあい。やっぱりちゃんと先生にマンツーマン指導を受けないとダメだろうな、これは。
まあ、できるところまで独学で行こうというプロジェクトでありますから、教則本にしたがってすすんでゆくのであります。
それにつけても、鏡に映ってる自分を見ながら言うのもナンだけど、横笛を吹く姿というのはなんともいえないカッコよさがありますな。我ながら惚れ惚れするZE。
鏡を見ながらやる、というのは決してナルシストだからなのではなくて、教則本の指示通りにちゃんとしたフォームでできているかを確認しながらやっているからなのです。
しかしこれで本当に正しいフォームになっているのであろうか。非常に心配であります。
なおわたしは以前書いたようにヤング時代に自転車のトレーニング中に派手な落車事故を起こし、頸椎や腰、股関節が再起不能な身体になったカタワでありまして、このフルートを構えた独特の姿勢は頸椎がけっこうキツいかもしれない、と感じました。左手のシビレが顕著にくるなあ。ギターを座って弾くと腰痛が悪化するのと同じように、フルートを長時間吹きすぎると頸椎の痛みと手にシビレがやってくるのはほぼ間違いない。ちょっと気を付けよう。
#05
2020年7月26日(日)
フルートを習おう!!
教則本を見ながらあれや、これやと試行錯誤していたのですが、やはりこれは先生の個別指導を受けないとダメだな、と思ったのです。
しかしこの原稿を執筆している2020年7月現在といえば・・・Chinaの武漢から感染が拡大し、WHOのテドロス事務局長がChinaの言いなりになって誤った情報を拡散した結果封じ込めに失敗し、世界的に感染者が拡大している「テドロス武漢ウイルス」が猛威をふるっていて、
音楽エンターテインメント業界は事実上壊滅
しているのであります。私が軸足を据えているフラメンコ業界もご多分にもれず「とてもじゃないけどステージなどできない状況」になっていますし、音楽教室というのも停滞を強いられているのであります。
ヴェノーヴァのレッスンも「緊急事態宣言」などの影響で長期にわたり休講を余儀なくされました。
うーん。フルートを習いたいがタイミングが悪いな・・・マンツーマンで、できれば家の近所で、手ごろな値段でレッスンを受けられる教室をさがしはじめましたが、正直言ってイバラの道だなと思ったのです。
マッチングアプリというのでしょうか。ネットを介してフルート講師を探すサイトを使ってみたら「オンラインレッスンもやっていますので是非!!」というオファーがすさまじい数おしよせてきて焦ったのですよ。他県の先生も大勢いました。オンラインなら住所も関係ない、ということなのでしょう。フルート講師の方々も、いまは生徒さんを集めるのが大変なのであろう。すごい喰いつき。こんなご時世ですから、生徒さんになってくれる人を講師どうしで奪い合うのだろうな。
いろいろ考えたけどオンラインレッスンはパスして、やはりマンツーマンで直接教えてもらう対面レッスンを選ぶことにしました。語学のレッスンならともかく、楽器の習得にオンラインは厳しいだろうと思うのであります。楽器の習得ってそんなに甘いもんじゃないよ。
・講師との事前相談
・レッスン見学
・体験レッスンの受講
など、いろいろ段階を経てゆくことが大事ですが、やっぱりテドロス武漢ウイルスのせいでスムーズにいかないのがつらいところです。
中にはひどい先生もいました。人間って不思議なもので初対面の第一印象ってデカいね。扉をあける→なんだこの人は?っていう人がいる→それが先生、っていう場合は100パーセント駄目であります。この人に教わりたい!っていう人に出会うのは本当に難しいけど、この人に習うのは絶対にイヤダ!!っていうケースは頻発する。第一印象が悪い人は絶対に無理ですわ。
幼い子供ちゃんが英才教育を受けて将来本格的な演奏者を目指す、というならともかく、私なんぞは「中高年の手習い」なんだから、あまりキビシいことを言われても困るのである。極論を言っちゃうと人生折り返しちゃってる私にはもう将来なんてないのである。そういう意味ではヤマハの大人の音楽教室なんかはいい感じなんですよね。こんな年齢になっちゃったけどどうしても楽器やりたい、音楽を楽しみたい、という層にしっかりとハマるレッスンをしてくれる。ヤマハではいやな思いをしたためしがない。残念ながら受講料が高いけど。
ということで、テドロス武漢ウイルスの感染におののきつつ教室探しをしていました。
最終的には「この先生に習いたい!」と思える先生が見つかったのでオッケーな感じであります。教室まで電車で1時間ぐらいというのがちょっと辛いですが(ウイルス感染がこわいので正直山手線とか乗りたくはない)、まあ、ヨイでしょう。しかし冷静になって考えるとフラメンコの唄、フラメンコギター、ヴェノーヴァ、フルートのレッスンという4正面作戦であります。戦線拡大。大丈夫なんでしょうか。まさに大東亜戦争中の日本みたいになってきたぞ。
でも私のモットーは
「これからの人生で今が一番若い」
「この世の生活は一度きり」
「続きは天国で」
なのであります。10年後の自分はいまよりも確実に「老い」ているのであります。なにごとも始めるならば「今」が大事なのであります。なぜって、これからの人生で今が一番若いからであります。
私はカトリック教徒なので「死と復活」がセットになっている人生を送っているわけですが、この世の生活はまさに一発勝負、いま生きているこの人生しかないのでありますから、やりたいことはやっておかないと、ああ、あのとき、あれをやっておけばヨカッタ、と後悔することになります。そんな人生はいやだ。
そして、今決断してはじめてみたが10年後には大成しなくてトホホ、という事があり得るのも人生であります。今フルートをはじめたところで、まともに身につかないまま死ぬことだって考えられる。それはそれでヨイのであります。そう、この世で望むもの全てが得られるとは限らない。続きは天国でやる、と思えば焦ることも、他人と競争することもないのであります。私なんてフラメンコギターは何年もやってみたけど全く上手くならなかなったよ。向き・不向きで言ったら向いてなかったのかもしれないとすら思う。でも楽しいからヨシとしているし、いっそうの上達は天国に行ってからでも遅くはないいと思っているから、もうそれで充分なのだ。
明日、熱烈なのどかファンに撃たれて死ぬかもしれない。人間、いつ死ぬかわからない。だからこそ、今やりたいことを、しっかりと全力でやるのだ。生前、あれこれ手広くやっておいて、将来天国に行ってもその続きを楽しもうではないか。
ということで話をフルートに戻すけれど、さっそく第一回目のレッスンを受けてきました。
結論としては、やっぱり習って良かったと思うのであります。組み立て方から構え方、音を出した時に何がよくて何が悪いのか、といったところまで細かくみてもらえる。演奏後のお手入れの仕方まで習う。独学ではこうはいかない。
憧れていた楽器のフルートをはじめることができて本当に嬉しいのであります。独学ダメ、絶対。いっぱい宿題を出されて帰途につきましたが、私の心は満ち足りていました。これからがんばって、一歩ずつ前進してゆこうではないか。そしていつの日か、きれいな衣装を着てエレガントにステージに立とうではないか。
「ヴェノーヴァ奏者にフルートは吹けるのか?」
っていうことではじまったこのコーナーですが、無事にというかやはりというか、教室に通う事になりました。私自身としては良かったと思っています。これは独学でできるモンじゃぁない。少なくとも私には無理ずら。
がんばるぞ。しまっていこー!!
#06
2020年11月30日(月)
真面目な話、たばこをやめた
私は喫煙者であります。ハタチのとき以来、紙巻き、パイプ、葉巻となんでもやる、いわゆる「ヘヴィ・スモーカー」でありまして、なんどか「断煙」は試みたものの、年がら年中「たばこが吸いたい」と思う気持ちは変わることが無かった。
何しろ日本で唯一、合法の麻薬なのである。
酒は中枢神経をやられるし、飲んだらオートバイに乗ることもできない。でもたばこは違う。いくら吸っても運転を禁じられることはない。ということで、私のひとり旅にたばこは必需品であった。
何よりもまず言いたいのは、いったんたばこの魅力にとりつかれてしまうと「これに代わるものが世の中に存在しない」ということであります。美味(うま)くて気持ちが良くなるという、夢のようなアイテムでありますから、やめろと言われても「じゃぁ代わりになるもの持ってきてみろYO!!」と居直りたくなるのであります。
若いころはたばこ雑誌に寄稿していたこともある。そのへんのレベルではなく、文化としてのたばこを語る知識人をきどっていたのである。
しかしここ数日、どうにも呼吸が苦しいので、また内科に行ってドクターに相談した。私はかなり前にCOPD、すなわち「慢性閉塞性肺疾患」の診断を受けているのである。そしてドクターから禁煙を命じられているのを、笑ってごまかしてもくもくと喫煙ライフを続けてきたのであります。それで医者に行くというのもなさけない話であるが、いいかげん私も「今度ばかりはチトまずいかもしれない」と思った。
クリニックで機械に息を吹き込む検査などを行う。苦しい。しばらくして診察室に呼ばれた。
ドクターの目は笑っていなかった。
「このまま吸い続けると、あなた、5年後には酸素ボンベ生活になるよ」
私はホントですか?と念を押した。早ければそれよりも前に、酸素ボンベ生活になるという。そして「もう失われた肺機能はもとにもどらなから、悪いことは言いいません。いますぐ禁煙してください」と言われて、私は診察室からよろめき出たのである。
かつて腰を痛めて左脚が不自由になり主治医から「あなたこのままだと50歳で車いすだよ」と言われたことなどを思い出した。必死のリハビリでもちなおし、車いすになんかなるもんかバカヤロー!!と笑って過ごしている現在であるが、さすがに5年後に酸素ボンベ生活を宣告されたのはダメージが大きかった。
そして、お会計をするまでの間、待合室の椅子に腰かけて「いよいよ本気でたばこをヤメる時が来たな」とボンヤリ考えていました。
私は管楽器奏者である。ヴェノーヴァとフルートを吹くのが私の人生である。酸素ボンベ生活になったら、フルートどころではない。いまでさえ、ロングトーンにかなりの弱点を抱えており、演奏のたびにゼエゼエはあはあと荒い呼吸をしているのである。フルートが吹けなくなったら、それこそ生きている価値がない。
私は帰宅して一服つけました(ぉぃ)。なんだかとてもマズい味であった。私はそこでしみじみと「たばこをヤメたいなぁ」と思ったのであります。もう、これまでさんざん吸ってきたのだ。パイプたばこも含めると、おびただしい量のたばこ(っていうかたばこ代、要するにカネ)を灰にしてきたのであり、いわば一生分吸ってしまったようなものである。もう卒業してもいいかな、というような気持ちになった。私はたばこの火を灰皿でもみ消した。
私はこの世の人生など取るに足らないと思って斜めに構えて生きてきたところがあり、若いころなどは「早く死ねるならとっとと死ねたほうがいい」ぐらいに考えていたのだが、いまはフルートの虜でありまして、中高年の手習い、なかなか進まぬもどかしさも含めて毎日を楽しんでいるのだ。ジャッキー吉川とブルーコメッツの「ブルーシャトウ」のあのイントロを吹けるようになるまでは、死んでも死にきれないと思う。
しかも、もし酸素ボンベ人間になったら。死ぬのではない。呼吸がまともにできなくなって、生き長らえるのだ。こんな拷問があるだろうか。ヴェノーヴァもフルートもあきらめ、車輪のついた酸素ボンベをつねに引きずり歩く人生がこれから果てしなく続く、というのは死ぬよりもつらい。
酒もたばこもやらない、バクチも男遊びもしない。何が楽しくて生きているのか、という感じにはなるであろうが、私は死んでもフルートを手から離したくはない。フルートは子供のころからの、あこがれだったのだ。
もしもタイムリープして中学、あるいは高校時代の自分に会って言葉を交わせることができるなら自分に言って聞かせたい。「あなたは将来、まごうことなき美人女性フルート奏者になるのだから、人生をナナメに見ていないで、いますぐお母さんの所にいって胸の内にある悩み苦しみをすべてブチまけたうえで、素直な気持ちでフルートのお稽古に通わせてもらいなさい。あなたの夢は将来すべて叶うよ」と。
当時の私は誰よりも音楽が好きだったのに、ロクに学びもせず、楽器からも距離をおいていたのだ。中学の時、私はすごくいじめられたのだが、助けてくれたのは「学校中の嫌われ者の音楽の先生」であった。高校に入学して間もなく、音楽の先生が「あなたの声は個性的でとてもいいから、合唱部に入らないか」と誘われ、腹式呼吸など個人指導を受けたりもした。思うんだけど合唱に必要なのって個性的な声じゃなくて周りと美しくハーモニーを合せられる声ですよね。でも、どういうわけか音楽の先生は私のことをとてもかわいがってくれた。でも私は楽譜もロクに読めない莫迦で、リコーダーもまともに吹けないレベルだったから、2年になって美術を選択し、音楽の先生から逃げたのである。
いろいろな意味で人生の道を踏み外してばかり、生きてきた。
しかし、巡り巡っていまはフルートの練習をしているのである。つまりはその、ヤング時代にあこがれ、胸に秘めつつも自ら「なれるわけがない」と否定していたフルート奏者に、なっているのである。夢はやぶれまくり、ふりかえれば恥と罪しかなく、つぎはぎだらけの私の人生ではあったが、最終的には、なりたい自分になれたのである。これは誇っていいと思う。
ということで、フルートの大切さを思えばたばこなんてゴミのようなものだ、と思った。喫煙の習慣をもうやめよう、っていうか人生で初めて、心の底から「たばこをやめたい」と思ったのである。
たばこをやめることで、人生の快楽はひとつ減るわけだが、もうどうでもいいことに思われてきた。それよりもフルートのほうが大事だ。
ということで2020年の待降節は、たばこをヤメるということで迎えたわけであります。もう吸いたいとも思わない(ホントか?)。今までの、ほんとは吸いたいけどガマンしてみる、という断煙とは決定的に違う心持ちである。
5年後も、50年後も、フルートを吹いていたい。ということで、やめました。たばこ。これまでありがとな!!アディオス。
#07